W720×D570×H14mmの国際規格の箱があります。
箱の内部は水色に塗ってあります。その箱の中の砂を触ったり動かしたり、中にお好きなアイテムを入れていただく言葉を使わないセラピーのひとつです。
湖や海のようにしていただいたり、山などの風景などを作っていただくことも出来ます。
ピカルディサードでは潤砂という水を使わずに造形を楽しめる砂と、南国気分なクリスタルサンドの2種類の砂をご用意しております。
※クリスタルサンド
クライエントさんによっては「砂」の持つ感覚が嫌いな方や、箱庭に恐怖を感じる方もいらっしゃいます。
箱庭に限ったことではありませんが、クライエントさんのこころにグサっと突き刺さることを、専門用語で「侵襲性が高い」と表現します。
ですからどんな心理療法も慎重に見守られた中で行うことを心がけ、いざという時には中止して速やかにクライエントさんの恐怖や不快感情を除去出来るように心理士は努めなければなりません。
クライエントさんのこころがいつもの状態より少しだけ子どもっぽくなることを「退行」と言います。
退行にはいくつかの種類があります。
カウンセリング場面で意図的に退行が促進されるように働きかけることを治療的退行といいます。退行の加減は大変難しく、カウンセラーである私もクライエントさんと一緒の世界観にご案内していただいているような気持ちになれなければカウンセリングでの深まりは難しいと私は考えています。
その一方でクライエントさんとカウンセラーの関わりが深くなりすぎて、私がカウンセラーという立場まで見失ってしまうと、面接時間を冷静にチェックできなくなってしまたり、クライエントさんとの感覚的な時間や情動の中で一緒に迷子になってしまうこともあります。退行はカウンセラーにも一緒に起こり得ます。しかし、そこは私はプロにならなくてはなりません。次のクライエントさんをお待たせしてはいけないし、退行をしすぎることでクライエントさんもパワーを使いすぎて帰り道で怪我でもしてしまったら大変です。退行には良性のものと悪性のもの治療に必要なものなど色々な種類があります。
カウンセラーとクライエントがある程度信頼関係におかれた中で生じる「遊び」や「ゆとり」として退行が生じることは私にとって大歓迎です。
今日のテーマである箱庭もクライエントさんの退行を促進する療法のひとつかも知れませんし、箱庭はハイリスクな療法のひとつかもしれません。
カウンセラーが支持的・共感的なことなんて心理士としては当たり前だと考えています。「支持」や「共感」は常にベースに持ちながら、クライエントさんの理解を深めるための「退行」を扱う勇気があることも時には心理士にとって必要なのかもしれないと私は考えています。
臨床心理士や医師の中には箱庭が大っ嫌いな方々もいらっしゃいます。
その理由を訊くとクライエントさんにアイテムを投げられてカウンセラー自身が危険な体験をしたり、クライエントさんに危険な退行をされたからとのことでした。
実際、勤務先の病院では心理科一同から箱庭を退けるように指示を受けてしまい、病院内では私の面接室に所狭し…箱庭棚とアイテムが並んでおります。
そして私が箱庭をしているというとユング派ですか?とか言われたり…。ユングは好きです。でも、箱庭=ユングなんて発想がpoorだなぁって私は思います。箱庭療法のスタンダードな使い方は何度も箱庭をしていく中でクライエントさんの変化を見ていくことかもしれません。
しかし、私はスタンダードではない様々な使い方さえもセラピーの中で積極的にご提案させていただきます。
実際にカウンセラーが箱庭を使うかどうかは別として大学院の相談室や心理療法の相談室に箱庭の設備があることは大切だと私は考えております。
子ども逹に大切なアイテムを埋められてしまったり、箱庭どころか、そこいら中の床にアイテムを置いて表現してくれるクライエントさんも、お話出来なくても非言語な箱庭の中だからこそ対話出来ることだってあります。
私自身も独り箱庭を作成してカタルシスを得ることもあります。
ということで!
是非、秋の夜長、芸術の秋に箱庭療法はいかがですか。
秋も深まり寒さも増して参りました。お風邪などひかれませんように。
お読みいただきありがとうございました。