恥ずかしさって何だろう

こんにちは、すっかり秋真っ盛りですね。柿やブドウも美味しい季節になりました。 今日は「恥ずかしさ」について考えてみたいと思います。 先日近所を歩いていたらほんわりと銀杏の匂いがしました。銀杏の香りを嗅いだ途端、恥ずかしい … “恥ずかしさって何だろう” の続きを読む

こんにちは、すっかり秋真っ盛りですね。柿やブドウも美味しい季節になりました。

今日は「恥ずかしさ」について考えてみたいと思います。

先日近所を歩いていたらほんわりと銀杏の匂いがしました。銀杏の香りを嗅いだ途端、恥ずかしい感覚が襲ってきて自分が銀杏の匂いを発しているのか!と思ったのです。私にとって銀杏の匂いは恋人と歩いている時には出来れば嗅ぎたくない香りです。その後(あぁもうそんな季節なんだ)と思いました…。そっか秋だなぁと。

キンモクセイの香りを嗅ぐと大切な人が亡くなった記憶が一瞬にして全身に入り込んで来ます。誰もいない時にキンモクセイの香りが漂ってきた途端にはひっそり落涙することもあります。

嗅覚野は扁桃体や海馬など記憶や好き嫌いを司るところの近くにあるので様々な感情や記憶と結びつきやすいのです。

もう何年も前の話です。病院の清掃員の方が病院中の銀杏を拾ってバケツに入れて、それを手袋で丁寧に洗っている姿を見ました。その清掃員の方は誰とも話さない?いや話せない方でした。黙々とピカピカに清掃をした後はホコリひとつありません。話しかけられるのが嫌いだと分かっていたので、彼女に会っても挨拶も会釈だけにしていました。洗った銀杏は彼女が召し上がるのかと思っていました。しかし、それは違いました。ある日、病院のバザーに小分けに袋詰めされた銀杏が売られていました。彼女はみんなのために病院中の銀杏を…手袋をはめてあの匂いを取り除いてバザーに出していたのです。自分勝手な解釈に対して反省しました。

もうひとつの恥ずかしさは私の耳にあります。特定の音やメロディラインや楽器を聴くと逃げ出したくなるほどの恥ずかしさが襲って来るのです。ピアノの先生に頼んで原典版の幻想即興曲を弾いていただいたのですが、ジャラララーン、ブルルーンっていう左手のパッセージを聴いた時には恥ずかしくてどうにかなってしまいそうです。その先生全体が恥ずかしい存在になってしまいそうです。ジャラララーン先生!

それは、上手に表現出来ないけど…恐らく通常の感覚を逸していると思います。その感覚のせいで、ひとつの曲を最後まで聴けない、聴きたくないくらい恥ずかしくなることがあります。恥ずかしさの性質としては、詐欺師の手口を見てしまった時のような感覚かな。うーん違う。アフロの方にいきなりカツラを脱がれた時の感覚かなぁ。あるいは、一生懸命過ぎるほど自分を前面に出して売り出そうとする人の痛々しいけなげさを見てしまったような感覚にも似ているかもしれません。

色々な恥ずかしさってあるんですね。多くの方が感じる恥ずかしさと私の恥ずかしさはどうやら違うみたいです。恥ずかしい感覚が不意に襲ってくると、自律神経は嘘をつけないから赤面してしまいます。学生時代に教授と何気ない会話をしている時に急に恥ずかしさが襲って来て顔が真っ赤になってしまったことがあります。確か…教授の引き出しから期限切れの温泉まんじゅうが見えてしまった時だったでしょうか。「あなた、急にどうしたのですか?顔が真っ赤ですよ!」赤面しながら「なんでもありません」とやっとの思いで言いました。その時の恥ずかしさは視覚から入ってきました。

ある時ご年配の方にいただき物でゼリーをいただきました。「ジェロだから冷やしてね」と言われた時にもびっくり→赤面コースです。(え、ジェロって?)

銀杏の香りから恥ずかしさを。言葉や態度で恥ずかしさを。知性の裏に隠された恥ずかしさを。音の響きから恥ずかしさを…。恥ずかしい感覚からは逃げたいけど逃げられないこともあります。五感で恥ずかしさを体感できるって考え方次第ではラッキーなのかもしれません。

誰にも言えない、たったひとつの恥ずかしさをやっとの想いでクライエントさんが話してくれる勇気に深謝の気持ちでいっぱいです。

どんな不思議な恥ずかしい気持ちも大切にできるカウンセラーでいたいです。対話の中の美辞麗句だけでは表層しかその方を理解できないことっていかに多いことでしょうか…。怒りや恥ずかしさや愚痴や妬みや悔しさや淋しさなどはラポールが形成されて初めて表現出来るのではないでしょうか。

恥ずかしさの中にはこころの秘密やお宝や、ある種のfetishismが隠されている可能性もあります。恥の概念を探求することをこれからも大切にしていきたいです。

もうすぐ銀杏が美味しく紅葉真っ盛りですね!日暮れが淋しい今日この頃です。

みなさまとの“Unique One”の時間を大切に紡いでいきたいと常に考えております。お読みいただきありがとうございます。