こころのベクトル→

こんにちは、気付けば季節も年度も節目を迎えております。事務所前の古民家の梅は今年も春を告げてくれました。

アネモネ真っ盛り!大好きなアネモネを相談室に活けました。もうすぐミモザも鮮やかなライトを放ってくれることでしょう。

今日はこころのベクトルを精神力動的に考えてみたいと思います。

私たちは他者なしでは生きていくことができません。他者との関係を避けて通ることも出来ません。それは生まれてから死ぬまで続きます。生まれを選ぶこと、いずれ死にゆくことも避けて通ることは出来ません。

私達には生まれもった身体・気質・生育環境があり、そこにさらなる経験が積み重なって今の私達がいます。ひとつ言えることは間違えなく、たった今心臓が動いていて、呼吸をして、食事を食べ、家族や社会などで何らかの関わりをもちながら生命活動を行なっているということです。

A.トマス先生という方が「育てにくい子ども」という概念を提唱しました。親をはじめとする養育者が一生懸命あやしても泣き止むことが難しかったり、過度に神経質で感受性が高すぎたりする気質をもった子どもです。一方でのんびりした気性の子どももいます。相談室にお越しいただく方の多くは非常に感受性に長けていらっしゃる方が多いです。その一方で、他者の気持ちになかなか気付けないことでも対人関係に辛さを抱えていらっしゃる方もいらっしゃいます。

幼少時の辛かった家族での環境から自由になれないまま大人になっても苦しんでいらっしゃる方は実はとても多いのです。

そのような方は時に周囲を道化師のように喜んでいただけるように誘います。

一方でベクトルが自己に向かっている方は他者の気遣いに関心が持つ余裕まで持てなかったり、そも、元来から他者にあまり関心のない方もいらっしゃるでしょう。パーソナリティ障害圏の状態にあるケースでは、周囲の人間関係を知らず知らず崩壊させてしまう方向に導いていることにも気付くことが出来ず、自己の辛さについて嘆き苦しみ悲しまれていることもあります。彼や彼女たちは、知らず知らずに周囲を自身が生き抜くために「決して悪意はなく」巻き込んでしまっていることもあります。大切なことは、パーソナリティ障害の状態にある方々が「好んで」「わざと」そのように振舞っているのではないということを周囲が理解することが大切です。もっと奥深くにある大切なことに目を向けることでパーソナリティ圏の方々のこころの安心・基本的信頼感が構築されることがあります。

私達にはそれぞれにこころのベクトルがあります。人間がたったひとりしか存在しないのと同じで、生育歴も経済状況も環境も誰一人同じ人は存在しません。ですから、私は“Unique One”の大切さを大切に自分の価値判断を脇に置いたカウンセリングに努めさせていただいております。

自己に向かうベクトルが顕著であれば「あぁ…あの人はなんて自己中心的な方、ナルだなぁ」と思われるかもしれまん。その一方で他者にむかうベクトルを持った場合には他者からは「優しい」「なんて他人思いなの」という評価になるかもしれません。しかし、その本当の奥には大きな自己犠牲が伴っている可能性もあるのです。

本当に大切なことは、自分を「適度に大切にできる能力」と相手にも「適度に気遣いが出来る能力」なのかもしれません。そのバランスはとても難しいことです。自己犠牲が行き過ぎると痛々しい“care taker” になってしまいます。一方で自己中心性が過ぎたなら、会社や学校での関係において、周囲からの冷たい視線を浴びても気付けないので、気付かないうちに周囲を翻弄し、ある日突然に気付いたら「本当の孤独」に陥ってしまうという堪え難い苦痛に襲われるかもしれません。

私たちは自分の特性を自分で理解出来ていないことはとても多いのです。

カウンセリングを受けることでご自身をメタ認知できるようになることは、他者からみた自分や、自分の振る舞いが周囲からどのように映っているかということを自己の中で客観的に俯瞰し対処できることにつながります。たった今のご自身のこころのベクトルが「誰に」「どの位の強さで」「どこに」向かっているか価値判断を脇に置いて考えてみませんか。それらをメタ認知できることで大きなヒントになるかもしれません。私も人間です。このようなことを偉そうに言える立場ではありません。ただ、心理士という仕事の特性から「業務中は」自分の価値感や感情は閉まっておいて、ひたすらに目の前にいらっしゃるクライエントさんの世界に没入するように努力いたします。

もし誰かを自己の利益のために利用していることに気付きそのような行動から人間関係がうまくいかないで苦しんだなら、行動変容ができるチャンスです。そして、対処法をを知ることは非常に重要です。逆に誰かの為にご自身を犠牲にしてしまうのなら、何らかの形でご自分を大切にするスキルを培うことも大切です。これらの辛さは心の中で抑圧されてしまったり、健忘の彼方に追いやられて、いつか心の噴火を起こす可能性があるからです。心に無限のキャパシティがあるのなら良いですね…。しかし、いつの日か何らかの出来事から何らかの症状として噴出することはよくあることです。

私怒ってる…私心の底から笑ってる…本当は嬉しくもない引きつった笑顔でいる。私この人のこと大嫌い…口では思ってもないことをスラスラと話している…それを気付くことには大きな価値があります。また、いつも他者のことをチクチク言葉で傷付けてしまったなら、それもアサーションのスキルを用いて相手にご自身の思いを伝えていく練習も大切です。こころのベクトルは形も深さも時間軸も長さも複雑なので、対人関係でお悩みが生じた際には、カウンセリングの中でそれらをひとつひとつ見付けてご自身の特性を活かしていただけましたら幸いです。

私は、どんな方でも「ただひとり」の大切なクライエントさんとして、その方のこころのベクトルも大切にしながらその方に合うだろう対処方法を一緒に育んで参りたい所存です。

まだまだ寒い日も多いです。でも時には木々の花芽に是非目を向けてみて下さい。桜もハナミズキも花芽はすくすく大きくなっています!

季節の変わり目です。たまにはのんびりまったり過ごすことも大切ですね…。

長文をお読みいただきありがとうございます。みなさまにとっておきの春が到来しますように!