無料より怖いものはない。

  こんにちは、今日は無料ほど怖いものはないというテーマでお話しさせていただきます。今でも忘れることの出来ない辛い思い出があります。私が小学生の3年生の時の話です。当時は新聞の広告を見るのが大好きな子どもでした … “無料より怖いものはない。” の続きを読む

 

こんにちは、今日は無料ほど怖いものはないというテーマでお話しさせていただきます。今でも忘れることの出来ない辛い思い出があります。私が小学生の3年生の時の話です。当時は新聞の広告を見るのが大好きな子どもでした。

近所のペットショップで「インコのヒナを先着50名無料プレゼント」という広告を見ました。当時は集合住宅に住んでいたため、犬や猫の動物は飼うことができませんでした。しかし、同じ団地内では小鳥やハムスターは飼っていた方も多かったので、子どもなりにインコなら大丈夫だと思いました。妹と一緒に100円玉を握りしめてバスに乗り、朝早くペットショップに行きました。私たちはインコのヒナを小さなケーキの容器のような紙の箱に入れてもらいました。ペットショップの人は次にこう言いました。「ヒナはただだけど鳥かごやエサがなければすぐ死んじゃうよ」。私たちは困りました。無料なのはヒナだけで、ヒナ用の給餌キットや鳥かごなどの必要な物品は有料だったのです。

「お金…今ありません。あとでまたお母さんにお金をもらって来ます」。そう応えました。妹とまだ羽毛の生え揃わない濡れそぼった裸の色をした雛を見つめて、「可愛いね、早くお母さん帰って来ないかな」。などと甘い考えで仕事帰りの母を待ちました。

母が帰宅するや否や「ヒナを返してきなさい。あなたたちに鳥を飼う資格はない。エサのやり方も知らなければエサもないじゃない」。私たちは母に懇願します。「お願い、面倒を見るから」。「エサのやり方もわからずに生き物を飼うようなことは許さない。返してきなさい。」。そんなやり取りが続きました。しばらく妹とふたり、外に出てどうにかインコを飼うことが出来ないか子どもなりに検討しましたが、結局ペットショップにインコのヒナを返しに行くことになりました。ペットショップのマスターには私たちから「すみません。お母さんにダメって言われて返しに来ました」。と伝えたところ、「返品はお断りですよ。あの後何人も欲しがっていた人がいたんだから」。と言われてしまい途方にくれていました。

そのやり取りをしている途中でヒナは箱の中でひっそり息を引き取っていました。

その後、泣きながら妹と2人で団地の庭に「鳥のお墓」を作りました。

鳥のヒナはひとつしかない命でした。その命を守るためには有料の給餌キットも籠もお世話の時間や知識も必要だったのです。無料という広告に惹かれた子ども時代の未熟さを今でも反省しています。

最近は初回無料や初回1000円などのキャッチフレーズが流行っています。

カウンセリング業界でも同じようなことが起こっております。初回20分無料などというキャッチフレーズでカウンセリングを行っている事務所もあります。しかし、私は初回無料ではカウンセリングを提供することは出来ません。なぜなら、私はカウンセリング業務を「ライフワーク=生涯の仕事」として選んだからです。
クライエントさんにカウンセリングや心理検査を行うことは「プロフェッショナルとしての仕事」なのです。ご友人やご家族とは異なり、専門的な見地からお悩みの緩和をご一緒に考えていきます。
クライエントさんにとって、私は「先生」や「優しい救済者」や「ボランティア」ではなく、職業人としての「プロフェッショナル」になりたいのです。

img_0090カウンセリングは現時点では保険が使えません。私が設定した料金は高額かもしれませんが、相談室を維持する上で、私が専門的な学びを続けるうえで必要なコストです。はじめは私自身の時間や枠を超えたクライエントさんとのかかわりから生じる自己満足・自己犠牲的な部分に気付くことが出来ませんでした。

ひたすらにクライエントさんの力になることばかり考えて、幾晩も寝ないで対応することもありました。それがこころを扱う「聖職」であるカウンセラーには必要なことだと考えていたのです。クライエントさんが大変な時に私も同じ気持ちになることが自然なことだと考えていました。

カウンセラーはクライエントに「使用されるために存在する」とイギリスの小児精神科医のウィニコットは言いました。私もウィニコットと同じ考えです。そのためには、いつかクライエントがカウンセラーを「使用しないでいられる」ことが目的だと考えています。私たちカウンセラーにとって最も大切なことは「カウンセリングという場でのみ生まれるただ一つのこころの力動に全力投球する」ことではないでしょうか。

経験を積んでいく中で、今はカウンセラーである私自身にゆとりがあることこそが、クライエントさんとの関係において重要であり、必要なことだと考えるに至りました。

カウンセリングの時間内は全力投球した上で、自分の趣味の時間、友人や家族と過ごす時間も大切にするようになりました。カウンセリングという中身が見えにくい仕事だからこそ、クライエント様に時間や料金も明確な構造を提供することを大切にしたいと今は考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

カウンセリングルーム・ピカルディサード

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